日本近世文学

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近世文学

一概観

1.近世文学の範囲

近世文学は江戸時代の文学とも呼ばれ、

1603年の江戸幕府成立から、1868年の明

治維新までの260年間の文学をいう。

2.歴史的背景

封建制度の下で、長い泰平が続いた時代であった。特に初

めの百年ほどは、商業の発達による町人の繁栄・都市の発

達・交通の発達には目を見張るものがあった。しかし、18世紀

中ごろから後半期にいたると、経済的破綻が次第にひどくなり、社会の不安は増大し、それにつれて幕府の取締りが次々と断

行された。町人たちは、そういう中にあって、退廃的・享楽的生活を送るようになっていった。

3.文化的背景

経済生活が次第に豊かになった町人階級が

文化の中心的存在になり、いわゆる平民文化が

花開いていく。また、印刷術も発達し、古典の翻

刻や、注釈が盛んに行われ、幕府も漢学を奨励

した。さらに幕府は儒学を進めたため、思想的

に大きな影響を及ぼし、文学も儒教思想の現れ

たものが多くなる。

4.近世文学の発展

①前期→上方文学の時期(1603~1750年ごろ)

元禄時代(1688~1703年)を中心にして、形成された華や

かな文学時代である。この時期に日本近世文学史上の三

大作家が現れた。

⏹松尾芭蕉(俳諧)

⏹井原西鶴(浮世草子)

⏹近松門左衛門(浄瑠璃)

②後期→江戸文学の時期(1750ごろ~1868年)

この時期の特徴は遊戯的傾向の強い文学が生まれたことと文学が大衆化したことである。

代表作家は山東京伝、曲亭馬琴(黄表紙を代表とする草双紙と読み本)、与謝蕪村、小林一茶(俳諧)、川柳、狂歌が流行し、浄瑠璃の代わりに歌舞伎が盛んになった。

前期と後期を詳しく四つの時期に区分できる

第一期(元禄時代以前)幕府の創業期

第二期(元禄時代)近世文学の黄金時代

松尾芭蕉、井原西鶴、近松門左衛門という三大文豪の出現

第三期(文学が江戸に過渡時期)

蕪村の俳諧、上田秋成の怪異小説

第四期(江戸時代)

山東京伝、曲亭馬琴の読本(小説)

歌舞伎

小林一茶の俳諧

川柳

5.近世文学の特徴

①町人主体の文学であって、文学の「庶民性」も持っている。

②人間性追求と現実に迎合する二つの性格を持っている。

③俗語がたくさん使われる。

④文学の理念では、個性を追求する。主に、さび、虚実皮膜、

粋、通、勧善懲悪などがある。

近世の文学理念

⏹「粋」という享楽精神(町人の文学)

浮世草子・浄瑠璃に取り入れられている。

⏹「通」→洒落本・人情本(遊里事情に通じる)

⏹「意気」→都会風に洗練された江戸っ子の意気地

⏹「勧善懲悪」「因果応報」→合巻・読本のテーマ

⏹「義理と人情」→浄瑠璃・歌舞伎に好まれる

⏹「さび・軽み」などは蕉風俳諧が求める芸術境地。

ニ.近世小説

中世の流れを受けた「仮名草子」から始まった近世小説は「浮世草子」という町人世界各小説類で特

に上方の中心を開花した。後期になると小説は文学

の主流を占め、読本、洒落本、滑稽本などと多様化し、遊戯的になり、近代初期へと流れていく。

1.仮名草子

江戸時代初期には、印刷技術の発達や庶民教育の向上などにしたがって、室町時代の御伽草子の流れを汲みながら、新時代を繁栄させた仮名草子が多数作り出された。

仮名草子は、公家、武家、僧侶などの知識人が庶民の

啓蒙、教訓、娯楽のための執筆したかな書きの読み物で、比較的に短いものが多い。

2.浮世草子

十七世紀の終わりの元禄期から約百年間、上方を中心に浮世草子が出版された。これは、しだいに経済的な力を得てきた町人階級によって作られた文学で、町人の好色ぶりや金もうけの悲喜劇を現実に即して書いたものである。町人は厳重な封建

的身分制度の枞に縛られていたので、経済的余裕が生じると

ともに、享楽生活にこの世をの楽しみを見出すようになった。浮世草子は、そういう町人の世態・人情を描いた小説である。井

原西鶴は浮世草子の最も代表的作家である。

井原西鶴の浮世草子の種類:

①好色物《好色一代男》《好色五人女》

《好色一代女》

②町人物《日本永代蔵》《世間胸算用》

③武家物《武道伝来記》《武家義理物語》

④雑話物《西鶴諸国話》《本朝二十不孝》

西鶴の特徴は、人間を冷徹な目で観察し、人間性の真実をとらえて写実的に描いた点や、巧みな話術と俳諧的手法を生か

した簡潔な文章で表現した点にある。また、文学史的にも、浮

世草子という文学形態を創始し、町人が町人の生活を描くという町人文学を誕生させたという点で、意義は大きい。

3.井原西鶴以後の浮世草子

八文字屋本

西鶴の没後、西鶴を模倣する者が続出し、浮世草子も数多く書かれたが、現実を見つめる目、人間性の追求、その表現力に

おいて西鶴には及ばなかった。その中では、江島其蹟の《世間息子気質》、《傾城色三味線》などの気質物が、職業・年齢・身

分から生まれてる気質を描いていて注目される。其蹟らの浮世草子は、京都の八文字屋から出版されたので、八文字屋本と

呼ばれ、十八世紀半ばまで上方で栄えた。

4、読本

絵を中心とした草双紙に対して、文章を主とした本を読本という。

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