中国の企业制度概観

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中国の企業制度概観

中華人民共和国の成立以降の中国の会社制度は、3段階に区分することができる。

第1段階: 50年代初頭から70年代末

建国初期には、中国は、民族資産の私営企業をそのまま認め、段階的に公私合営企業に改組する政策を採用した。また、私営企業を公私合営企業に改組した際にも、会社形式を継続した。

しかし、1956年頃から中国政府は、私営企業や公私合営企業に対し「社会主義改造」を実施し、ほとんどを国有企業に改組した。現在、大量に存在する「国有企業」は、この時期に由来するものが多い。

国有企業や集体所有制企業は、民事事件で損害賠償義務を負う能力を有するとされたほかは、その予算や人事はすべて国家によって管理され、独立採算ではなく、営利性を有する「会社」と言える状態ではなかった。

これ以降、私人の資本による会社は、ほとんど存在しなくなった。この状況は、70年代末に至るまで続いた。「公司(会社)」を称する国有企業もあったが、営利性・法人性もあいまいで、実際には「工場」、「鉱山」、「商店」などの代名詞に過ぎなかった。

第2段階: 70年代末から90年代初頭

文化大革命が終了し、70年代末から「開放政策」が実施されるようになった。外国資本による投資の奨励、国有企業改革を目的として、多数の法律と行政法規(行政命令)が施行された。

その結果、私人の資本による会社や香港・マカオ・台湾を含む外資系の会社が大量に設立され、「会社熱」とも言える状況になった。この時期には、1985年の「公司登記管理暫行規定」以外、会社制度を網羅する会社法典は制定されなかったため、各種の形式の会社が混在し、多くの混乱が発生した。現在でも、この時期の法律と行政法規や地方法規に準拠する多数の会社が存続している。一方、1988年には、独立採算・工場長の請負制などを規定する「全民所有制工業企業法」が制定され、国有企業の改革が始められた。

第3段階: 90年代初頭以降

1994年の中華人民共和国公司法(会社法)は、個別の準拠法に基づく各種の「会社」を統一的に規制することを目的として制定された。一方、国有企業の改革は、全民所有制工業企業法による改革以外に、会社法上の会社への改組の道を開き、国有企業の会社化への「試行」が始まった。

以下では、日本法との対応に配慮しつつ、できるだけ条文排列に従って中華人民共和国公司法(会社法)の内容を概観する。ただし、説明の便宜上、第2章と第3章(それぞれ有限責任会社と株式有限会社の設立と組織機構)は、有限責任会社と株式有限会社を対照させながら、一括して説明する。

1. 会社の意義

1994年に施行された中華人民共和国公司法(会社法)では、有限責任公司(有限責任会社)と股分有限公司(株式有限会社)が規定されている。これらは、会社法で初めて創設された会社類型ではない。なぜなら、1970年代末以

降の「開放政策」で各種の法規や地方法規による多数の会社が成立し、会社法は、それらの会社規定を整理・統一するために制定されたといってよいからである。会社法の施行後も、従前の各種の法規を準拠法とする会社が存続している(229条)。

有限責任会社は日本法の有限会社に、株式有限会社は日本法の株式会社に、それぞれ類似する。有限責任会社と株式有限会社は、その社員が出資額を限度に責任を負う有限責任の法人であり(3条)、営利性に関する規定(5条)も存在する。社団性を規定した条文は見られないが、設立時には2名以上(有限責任会社、20条1項)、5名以上(株式有限会社、75条1項)の社員・発起

人が要求されている。その意味で、営利を目的とする社団法人と定義する日本法の会社と大差はない。ただし、国有独資公司(国有独資会社)は、設立時から一人会社であり(64条)、社員総会が設置されない(66条)など、制度上も社団性が排除されている。また、後述の外資系のいわゆる「三資企業」についても、会社の基本事項は、合弁の当事者間の契約で定める(中外合作経営企業法2条)とされるなど、会社内部の関係では、社団性より組合性が強く現れる。

また、株式有限会社は、その登録資本の最低限度が1000万元(日本円で約1.5億円)とされ、株式の募集は、公募によらなければならないなど、相当に大規模な会社が想定されている。立法意図に反して中小企業が多い日本法の株式会社とは異なる。

いわゆる「三資企業」について

「外資企業」、「中外合資経営企業」、「中外合作経営企業」の3形態の企業が、それぞれ異なる準拠法に基づいて法制化されている。こ

れらの準拠法は、1970年代末から1990年代初頭までに至る文革後の「開

放政策」の産物であり、制定された時期の外貨事情を反映して、国有化

の原則免除・利益の海外送金の保障など、外資の導入を目的とする規定

を持っている点で共通する。これら準拠法に基づく3形態の企業を総称

して講学上、三資企業と呼ぶ。税法などの他の法律では、「外商投資企

業(外国資本投資企業)」と総称されることが多い(国務院関于鼓励

外商投資的規定2条、外国資本投資企業及び外国企業所得税法2条参照)。

三資企業は、いずれもその設立に対外貿易主管部門等の承認を要し、登記を求められる。しかし、有限責任会社であることが要求される中外

合資経営企業を除いて、必ずしも法人ではない。以下の対照表で明らか

なように、中外合資経営企業は会社形式の、中外合作経営企業は組合形

式(会社形式も可能)の、合弁事業(joint venture)を想定している。

なお、三資企業の準拠法は、会社法の制定によって廃止されたわけではない。三資企業が会社法上の有限責任会社になった場合、原則として

会社法の規定が適用されるが、準拠法の規定が会社法の規定と異なるときは、準拠法の規定が優先して適用される。(会社法18条)

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