情书书信内容
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『情书』书信摘录
1、「拝啓藤井様、お元気ですか、私は元気です。渡辺博子」
2、「拝啓渡辺博子様、私も元気です、でもちょっと風邪気味です。」
3、「拝啓藤井樹様、風邪の具合はいかがですか?お薬飲んで、早く治してください、渡辺博子。」
4、「拝啓藤井樹さま、今日帰りの坂道で桜の蕾が膨らんでいるのを見つけました。こちらはそろそろ春の気配です。渡辺博子」
5、「拝啓、渡辺博子様、あなたはいったい誰ですか、お願いですから、本当のこと教えてください。」
6、「拝啓藤井樹様、あなたに会うために、小樽(おたる)に来ました。今この手紙はあなたの家の前で書いています。わたしの知っている藤井樹はあなたではありませんでした。ここに来てようやくすべてがはっきりしました。私の藤井樹は男性です。そして昔、私の恋人だった人です。彼は二年前……」
「彼は今何処にいるのかわかりません、ただ、時々思い出すんです。どこかで元気でやっているかなって思うんです。そんなつもりで書いた手紙でした。だからところに届かなかったよかったです。」
「あなたに大変ご迷惑をおかけしました。本当に済みませんでした。彼と同じ名前のあなたに会ってみたくて、ここまで来たけど、会う勇気が出ませんでした。思えば、手紙だけの間柄でした。手紙だけで失礼させていただきます。」
7、「拝啓渡辺博子様何にも事情知らずにひどい手紙を送ってしまいました。勘弁してください。そのかわりに一つだけ耳寄りな情報を提供します。」
「実は、あたしが中学のごろ、同じクラスに同姓同名の男子がいたんです。ひょっとしたら、あなたの藤井樹っていうのはあいつのことではないでしょうか。」
8、「お元気ですか?あなたの言う藤井樹と私の藤井樹はやっぱり同一人物のようです。実はこの手紙の住所は彼の卒業アルバムの中から見つけたんです。すべては私のそそっかしい勘違いでした。本当にごめんなさい。ところで、こんなに迷惑をかけておいてお願いするのがずうずうしいことなんですが、もし彼について何か覚えていることがあれば、教えていただけないでしょうか?」
9、「拝啓渡辺博子様確かにあいつのことはよく覚えています。でも、彼との思い出はそのほとんどが名前にまつわるものばかりで、といえば、大体想像がつくと思うけど、それは多分あんまりいい思い出とは言えないものばかりなんです。入学式の日からしてすでにそうでした。
この調子の狂ったスタートきてしまった私の中学生活を以後も、あいつのせいでふどうな差別に満ち溢れた暗い三年間になってしまったのです。たとえば、日直のときなんか……
こんな日も一年の辛抱かと思ったら、私たち何と三年間ずっと同じクラスになってしまった
のでした。はたで聞いているぶんには面白いでしょう?でも、当人には結構辛い日でした。お互いなんとなく避けあって、あんまり話しをした覚えもありません。」
10、「拝啓藤井樹様彼はどうだったのでしょう?同じ名前の女の子にどこか運命的なものを感じていたのではありませんか?
11、「それはありえないわ。あなたはなにかのロマンチックな空想にしたってるようだけど、現実というものをもっと殺伐としたものよ。私たちの関係は例えれば、アウシュビッツの中のアダムとイブってとこかね。繰り返される冷やかしのこうもんに生きた心地もなかったわ。クラス委員選挙の時のあの事件のことなんか、思い出すだけでも忌い)まわしいんだ。投票用紙の中にこんなふざけたのが一枚だけ混じっていたんです。それを開票係りの稲葉がわざわざこう読み上げたの:藤井樹ハード藤井樹。生徒たち:おめでとう。おめでとう!ところで、それだけじゃ終わらなかったわ。クラス委員選挙の後は各種専門委員ってやつ、放送委員とか、その最初が図書委員選挙でした。なんかいやな予感がしたのよ。彼の暴動も空むな)しく、結局、私たちは図書室送りにされました。
でもあいつは仕事をサボったばかりで、ほとんど働いてくれませんでした。あいつとにかくたくさんの本を借りてくの。それも《青木昆陽の伝記》とか、《マラルメの詩集》とかいう類(たぐい)の本、要するに、誰も借りないような本ばかりだったの。要するに、あいつは誰も借りてない白紙のカードに自分の名前を書くのを楽しんでただけなの。あきれた私は彼にこう言いました:馬鹿じゃない?でも、彼にはこの悪戯がよっぽど気に召したみたいで、あきもせずに、しょっちゅうやってました。とにかく変なやつでした……」
12、「拝啓藤井樹様お手紙深く感謝しています。あなたの思い出の中に住んでいる彼はもちろん私の知らない彼です。でも、やっぱり彼なんです。きっとそんな彼がいた場所や時間はもっとたくさんあって、私が知ってる分はほんのわずかなんですね。あなたの手紙を読んで、そんなことを感じました。どうかもう少しお話を聞かせてください。あなたの思い出を分けてください。」
13、「それは確かに二年の期末テストの時、答案を手にした後の私は、立ち直らないぐらいにショックを受けました。27 点!その27 って数字は未だに忘れられないわ。ところがみると、これは私の答案じゃなかった。ということは、あいつが裏にごりごり落書きなんか書いている奴が私の答案のはずです。それが長い一日の始まりでした。あたしの答案返してよ、その一言がどうしても言えないばかりに、勝負は放課後へ持ち越されたのでした。あのごろこうかに自転車置き場、恋人たちのメッカでした。それは隣のクラスの及川早苗デシタ。つかの間愛を失った私はまた人であいつが来るのがずっと待ちました。そのいわくつきの答案を見つけたので送ります。裏の落書きはあいつの執筆でした。」
14、「拝啓藤井樹様直筆(じきひつ)入りの答案用紙ありがとうございます。大切にします。ところで、彼はどんな女の子が好きだったんでしょう?例えば、初恋の相手なんかに心当たりはありませんか。」
15、「拝啓渡辺博子様そこまでに彼のプライベートに関わるデータは私にはありません、でも、あれで結構、あいつモテたからなア。覚えてますか?及川早苗、あの子が絡(から)んでおきたひと悶着(もんちゃく)がありました。」