がんを内部から攻撃する方法-高良毅先生

がんを内部から攻撃する方法-高良毅先生
医療の最先端技術を結集したともいえる遺伝子療法は、がん抑制遺伝子の一つである「ｐ5３遺伝子」を用いて行われる。

通常、人間の体内では、がん遺伝子（ｒas）が増殖しすぎてがんにならないように、ｐ５３遺伝子が適切に働いて細胞のがん化を抑え込んでいる。

しかし、このｐ53遺伝子に異常があったり、数が少なくなったりすると、がんが増殖しやすくなってしまう。

また、紫外線などの影響でdnaに傷がつくと、通常はｐ53遺伝子からの指令で、傷がすぐさま修復されるか、異常細胞を死に導く「アポトーシス」というある種の自爆装置的メカニズムが働くようになっている。

ところが、ごくまれに、傷が修復されずに残ってしまう場合があり、そこからがんが発生するケースもあるのだ。

つまり、ｐ５３遺伝子は、細胞を癌化させるか否かの鍵を握る、極めて重要な存在なのである。

「ｐ５３遺伝子の重要性については、これまでに発表された研究レポートを見てもよくわかります。

がん患者の多くは、ｐ５３遺伝子の発見が弱いか、もしくは欠損しているとされているのです」
そこで遺伝子治療では、ｐ５３遺伝子をがん細胞に送り込む。

すなわち、がんの増殖を阻む機能を強化することになるわけだ。

これに、前述したような他の治療法を併行させると相乗効果が生まれ、より望むしい結果が出ることもあるという。

「ｐ53を使った遺伝子療法は、がん細胞をアポトーシスに誘導するなど、いわば内側から攻撃するタイプの治療法です。

一方、細胞免疫療法は様々な免疫細胞を体内で増やし、がん細胞を外側から攻撃するタイプの治療法になります。

一般論をいえば、これら２つの治療法をやるのが理想だと考えています。

」高良毅先生
冒頭で紹介した肺癌の症例は、ｐ５３単独の遺伝子療法で大幅に改善された。

その次に挙げた食道がんの症例は、遺伝子治療と免疫治療の併用で、qolまで向上している。