朝日新闻社说
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警視庁のものとみられるテロ捜査の書類が流出してから1カ月。いまも大量の電子フゔルがネット上を漂い、世界中の1万台を超えるパソコンにダウンロードされたという。
その資料をそっくり印刷して書籍にした出版社に対し、東京地裁が、出版や販売を差し止める仮処分命令を出した。顔写真や交友関係といった個人情報をさらされたスラム教徒らの申し立てを受けた判断だ。
出版の自由や言論の自由は民主主義の根幹である。しかし、プラバシー権とのかねあいをどう図るかは、難しい。今回の資料はネット上で公開されてしまっており、出版だけ止めても意味がない、という意見もある。
だが、中にはテロとかかわりがあるかのような記述をされた人もいる。普通の市民ならば、絶対にばらまかれたくない内容だ。それが書店の棚に並べば、ネットで探すより容易に手にとって見ることができる。
出版によって、回復が著しく困難なほどの権利侵害が起きるとした今回の判断は妥当だろう。東京地裁は、仮に出版社が情報流出について問題を提起したのだとしても、「詳細な個人情報自体は公共の利益にかかわるとはいえない」と断じている。
ネット時代に、出版社を含む既存メデゖゕはどう向き合うべきか。
ネット空間は今や権力が秘匿する情報を暴露し、告発する手段としても使われるようになった。折しも、ウゖキリークスによる米外交文書の暴露が世界を揺るがせている。一方で、有害な情報がひとたび流れ出てしまうと完全に取り除くことは不可能だ。
まず情報の真偽や価値を見極める。ついで公開によって社会が得る利益と被害を比べる。そして、報道に踏み切るか判断する。新聞や出版、放送など既存メデゖゕの役割はなお重いと考えるべきだ。公益性の吟味をせずに情報を写すような今回のやり方は、責任を果たしているとはいえないだろう。
警察はいまに至っても流出資料を本物と認めておらず、出版の動きに抗議することもできなかった。被害者をこれ以上不安に陥らせぬためにも、早く認めて謝罪するべきだ。
申し立てをした人たちは、警察当局の対応に憤っている。警視庁は、携帯番号や家族構成まで暴露された捜査員については安全を守る手立てをとっているはずだ。その配慮を、民間の被害者にももっと尽くすべきである。
流出経路の調査は難航している。警視庁公安部では、暗号化やデータ持ち出し防止策がないパソコンが使われていた実態も明らかになった。
警察が守るべきは誰か、正すべきことは何か。失敗を認めた上で、ことに当たってほしい。それが、失った信頼を少しでも取り戻す道だ。
年金の国庫負担―借金頼みの実態を隠すな
財源が確保できないので借金に頼らざるを得ないというのなら、その実態を隠してはならない。国民に知らせ、国債という借金を減らしていく努力につなげることが大切だ。
来年度予算の編成で検討が進む年金のような問題は、とりわけそうであり、小細工は禁物である。
年金制度を支えるには、基礎年金の3分の1だった国庫負担の割合を引き上げることが長年の課題とされてきた。2004年の制度改革のさい、09年度から2分の1に引き上げることが法律に明記された。
だが、そのための増税を先送りしてきた結果、2.5兆円の恒久財源を確保できない状況が続いている。
09、10両年度は財政投融資特別会計の積立金という「埋蔵金」の取り崩しでつじつまを合わせた。来年度に向け検討されているのが、年金特別会計の積立金128兆円の流用だ。
この積立金は、過去にも財政のやりくりで使われた。一般会計からの繰り入れを一時的に停止し、その分だけ積立金を取り崩して給付した。国債発行額は圧縮され、うわべは財政規律を保ったかに見えたが、実質的には赤字国債の発行と同じである。
年金特会では、将来の給付に備えて積立金を確保している。お金の山があるように見えても、余っているわけではないのだ。
流用が一時的なら、年金給付の減額や保険料の値上げに直結するわけではない。だが、「隠れ借金」とも呼ばれてきた手法の復活は安易な流用の横行につながりやすく、借金の実態を見えにくくする点も問題だ。
こそくな手段に頼らず、むしろ赤字国債を発行したほうが、不足分が目に見えるだけ、ましだと言えよう。
何よりも、菅政権自身が今年6月「会計間の資金移転や赤字の付け替えなどに依存した財政運営は厳に慎む」との財政運営戦略を閣議決定していることを忘れてはならない。
自ら定めた規律を破るとなれば、政権への信認はますます落ちる。もちろん、基礎年金の国庫負担を維持するために国債を発行する結果、政権が設けた「国債発行は44兆円まで」という枠を破るようなことも許されない。
苦しくとも他の歳出を削るなどの工夫をこらして、44兆円枠を守るよう努力してほしい。
もはや明らかなはずだ。毎年2.5兆円もの金額をまかなうための選択肢は増税しかない。さもないと、毎年の予算編成のたびにこの問題が立ちふさがるだけである。
菅直人首相も民主党も、参院選の敗北を機に、消費税を中心とする税制の抜本改革という重要課題を先送りしてしまった。その姿勢を改めない限り、真の解決策は見えてこない。
好むと好まざるとにかかわらず、企業・団体献金には頼れなくなる。
総務省が公表した2009年の政治資金収支報告(中央分)は、いずれそんな時が来ると予感させる内容だ。
都道府県選管に提出される地方分をあわせてみないと、全体像はわからない。だが、中央分の企業・団体献金は28億円弱にとどまり、ピークの1990年の約16分の1。各党の政治資金団体に対する企業・団体献金も90年代に激減し、09年はそれ以来最低だった。
この間、度重なるスキャンダルを受けて規制が強化された。冷戦終結で「自由主義体制の維持」のため自民党に献金するという大義名分は消えた。細川「非自民」政権や民主党政権の登場で、企業がなぜ特定政党を支援するのか理由を見いだしにくくもなった。
細る企業・団体献金にいつまでもしがみついてはいられない。各党はそう認識すべきだ。禁止を公約した民主党は先頭に立つ責務がある。
ただ、企業・団体献金が細っても、政界の金銭疑惑は尽きない。献金がゼロになれば、すべて良くなるわけではない。カギを握るのは透明性だ。
たとえば、民主党の小沢一郎元代表に関連する収支報告には、複雑な資金のやりとりが記されている。
政治団体「改革フォーラム21」から、小沢氏が代表を務める党支部へ3億7千万円。同額を党支部から小沢氏の資金管理団体「陸山会」へ。これらを原資に、昨年の総選挙の立候補予定者91人に約4億5千万円が配られた。
「フォーラム」には、解党した旧新生党の資金がプールされていた。それが小沢氏の資金管理団体のカネとして配られ、小沢グループは伸長し、党代表選の国会議員票に結びつく。複雑なやりとりを経て、政党の資金が個人の政治力の源泉に変身したことになる。
党支部を経由したことには、別の疑念も向けられている。政治資金規正法の規定で、政党などを除く政治団体同士は年に5千万円までしか寄付できない。その規定を免れる抜け道に使ったのではないか、という点である。
政治家が多くの「財布」を持ち、財布同士で出し入れするから、こんなことが起こる。財布は一つと決めてしまえば、ずっと見えやすくなるだろう。