天声人语(2014年9月)

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天声人语(2014年9月)

2014年9月30日(火)付

芸術の、読書の、食欲の、実りの、スポーツの……。指を折って挙げてみると「秋」は多彩だ。人為も自然も多事多難ながら、人の志に光を見た9月の言葉から▼100歳の記念展をめざして大作に取り組む東京の画家、入江一子(かずこ)さん(98)はシルクロードの人々を描いて半世紀になる。「1時間描いて、疲れたら1時間眠る。その繰り返しよ。最近やっと絵画の奥義がわかってきたので面白くてね。だから今はまだ死にたくないの」。制作のアイデアは次々に浮かぶ▼国際アンデルセン賞の授賞式がメキシコであった。作家賞を受けた上橋菜穂子(うえはしなほこ)さん(52)はあいさつで「他者の気持ちに寄り添って歩み、読み終えた時は読み始めた時と少し違う場所に立っている。そういう物語を書きたい」▼49歳でプロ野球最年長勝利を挙げた中日の山本昌投手が言う。「完成なんてない。完成していたら全部勝てる」。そして、「一生懸命投げる。しつこく投げる。諦めずに投げる」。それが31年不変のスタイルだ、と▼大津波に遭った岩手県陸前高田市の小友(おとも)地区。4年ぶりに黄金色に実ったのは震災後に誕生したブランド米の「たかたのゆめ」だ。収穫した村上強(つよし)さん(43)は「新しい土で稲が育つ地力があるか心配した。よく育った」▼アジア・全日本マスターズ陸上100メートルに今大会最高齢の104歳、京都市の宮崎秀吉(ひできち)さんが出場し34秒61でゴール。元気の秘訣(ひけつ)を「欲をかかないことと、食べ物に気をつけること」。健康寿命にあやかりたい。

2014年9月29日(月)付

土井たか子さんが残したものは何だったかと思い巡らせる。筆者が社会党の取材を担当し始めた1990年、委員長だった土井さんは輝いていた。「山が動いた」89年の参院選に続き、90年の衆院選でも議席を伸ばしたからだ▼二つの選挙で初当選した議員の顔ぶれは清新に見えた。党の生え抜きや労組出身でない、いわば市民派の登場だ。牢固として変わらぬかに見えた55年体制が少しは変わるのではという期待を抱いたものだった▼確かに社会党はその後、社民党と名前を変え、細っていく。清新だった新人たちの多くは土井さんと歩む道を異にした。それでもやはり、あの二つの結果がなかったらと想像する。永久与党といわれた自民党も巻き込んだ政党再編は起こったか、と▼土井さんの本意はともかく、93年の、ひいては2009年に起きた政権交代の遠い源を、かつての土井社会党に見いだしてもいい。日本の政治も変わりうるのだということを土井さんは身をもって示したのだから。その奮闘が後の世代に手渡したものはとても大きい▼訴え続けた護憲が押されている。だが、主張の原点は色あせていない。徹底した反戦であり、厭戦(えんせん)である。理屈以前のその気持ちが土台にしっかりあるかどうかが決め手では――。評論家の佐高信さんとの共著『護憲派の一分(いちぶん)』でそう語っていた▼よりどころにしたのは政治のプロにはない素人の感覚だった。議員の名を「君(くん)」ではなく「さん」と呼んだ衆院議長時代の声がなつかしい。

2014年9月25日(木)付

「みなさん、長い夏のお休みは面白かったですね」と児童に語るのは、宮沢賢治の童話『風の又三郎』の先生だ。谷川のほとりにある小さな学校の9月1日、登校してきた子らを集めて先生は続ける。「これからは第二学期で秋です」▼「むかしから秋は一番からだもこころもひきしまって、勉強のできる時だといってあるのです。ですから、みなさんも今日から又(また)いっしょにしっかり勉強しましょう」――。神戸市の小学1年の幼い胸にも、希望や意欲がいろいろあったことだろう▼遺体で見つかった6歳の

女の子は、2学期から「音楽係」になった。クラスの朝会などで音楽を流す係である。はりきっていたそうだ。「運動会ではダンスをがんばります」と秋の目標をたてていた。あまりにむごい結末に胸が詰まる▼子どもを狙う卑劣な犯罪が後を絶たない。本紙がまとめた「主な事件」を見ていて、小1女児の被害者が目立つのに気づいた。ランドセルが歩いているような後ろ姿で登下校する、いたいけな子たちだ▼あぶない時間帯は下校から夕刻にかけてだという。夕暮れ時を「逢魔(おうま)が時」と呼ぶと、前に小欄で書いた。神戸の女児も最後に目撃されたのは5時半ごろだった。「魔」は魔物ではなく、人界に住む人間が化ける▼ご家族の涙はいかばかりか。「今日から又いっしょにしっかり」の仲間を失った幼い級友のショックも心配になる。小学校はあさっての運動会の見送りを決めたそうだ。悲しみと怒りが消えていかない。

2014年9月24日(水)付

ニューヨークの川べりに立つ国連本部ビルは教科書などでおなじみだ。毎年9月になると総会が始まって、各国首脳らが参集する一般討論演説がこの街に秋の訪れを告げる。今年も現地時間のきょうから、壇上で主張が交わされる▼総会の空気はその年によって変わる。2001年に起きた9・11テロ直後には、討論は「対テロ国際協調」一色に染まった。翌02年はイラクへの武力行使が最大の焦点になり、まさに「イラク総会」の印象だった▼当時のブッシュ米大統領は、壇上で「イラク攻撃辞さず」の強硬さを隠さなかった。片や、アナン国連事務総長は「米がイラクを攻撃したとき何が起きるかを予測するのは難しい」と深い憂慮を口にしていた▼大統領を支えた米の新保守派(ネオコン)からは独善的な声が聞かれたものだ。米国が良しとする方向に世界秩序を導こうとした人たちである。正義と大義が呼号され、戦争は「相手を倒せば終わり」ではないことに無理解だった▼憂慮は的中したといえる。イラク戦争の深刻なツケを、現在の世界は背負う格好だ。ニュースで「イスラム国」を見ぬ日はない。戦争でサダム・フセインという「瓶のふた」がとれて出てきた怪物は、テロ組織の枠を超えて版図を広げている▼国連総会でのブッシュ演説から開戦までの半年は、国際社会が米を止めようとしてできなかった日々だった。いまシリア空爆の吉凶は読み切れず、混迷は増す。ここは各国の知恵と協調で有効策を探ってほしい。

2014年9月23日(火)付

近所のお宅に植わっている柿の実に、色がさし始めた。きのうの朝、駅までの道で気がついた。残暑に汗をぬぐうお彼岸もあるが、今年の秋の足取りは律義なようだ。昼間は日差しの強さが残っていても、夕べのあかね雲は夏場の色とは違う▼春夏秋冬いずれが好きかはそれぞれだが、古来、秋はずいぶん好まれてきた。国語学者の故・寿岳(じゅがく)章子さんは「源氏物語」に使われている語を調べたことがあった。よく登場する上位300語をみると、夏と冬は入らず、秋は春よりずっと多いと随筆に書いている▼「平安女流文学の季節は秋であるといえるかもしれない」と寿岳さんは言っている。そういえば万葉集も、一番多く詠まれている花は萩(はぎ)だと聞く。草冠(くさかんむり)に秋と書く文字でハギを指すのは、日本独自のことだという▼意外に思う人もおいでだろうが、「花野」という言葉は春ではなく秋の季語になる。秋の野辺に咲く花は思いのほか多い。女郎花(おみなえし)にせよ、葛(くず)や竜胆(りんどう)にせよ総じて地味だが、園芸種とは違う素朴な姿が、今も詩心を誘ってやまない▼秋をおおざっぱに分けるなら、9月が「はしり」、10月が「さかり」、11月が「なごり」となろうか。今日は秋分の日。彼岸を過ぎれば夜長になって、人の心も秋気(しゅうき)に染まる。「もののあはれ」の季節への移ろいである▼寿岳さんは秋の霧の効用についても述べていた。「霧は視界を妨げるのではなく、ものの色に不思議な影をつける」と。先達に学ぶことの多い、日本の秋の味わい方だ。

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