京町屋

京のお宝～京町屋・もくじ１ イントロ２ 京町屋の定義・特徴３ 現代住宅との比較４ 京町屋を残していくために５ まとめ６ 感想１ イントロ私たちは最初、軒について調べるか、漬物について調べるか迷っていた。

軒は調べるのが大変だけど、やりがいはありそう。

でも、漬物は文献もいっぱいあるし、軒よりは苦労しないんじゃないかと、話し合っていた。

すると、先生が話しに加わってきてくれて、軒を通してとても熱く語ってくださった。

その熱のこもった話を聞いて、軒にしようと決めた。

軒を調べだして一週間が過ぎて、自分たちの調べたことについて話しているとき、三人ともが調べる文献が少なすぎると嘆いていた。

京町屋の本はたくさんあるのに、軒についてはそれほど詳しくは書かれていなくて、このままでは結論に達しないんじゃないかという話になって、もう少し範囲を広げて京町屋を対照にしてはどうかという意見がでた。

それなら資料もたくさんあるし、調査にもいきやすいという話になり、結局、私たちのテーマは京町屋ということになった。

この本では京町屋とはどのようなものか、京町屋のお宝性、また、これから京町屋をどのように残していけばいいのか話していく。

２ 京町屋について京町家とは京町家の始まりは平安時代にさかのぼる。

京都市景観まちづくりセンターによれば、平安時代に、ものづくりや商いを営んでいた人々が、通りに面した土地を買い、自らの暮らしの拠点を京都の大路･小路に面した空間に求め、そこに小屋を造ったことが町家の始まりのようである。

つまり、基本的には町家は商売をする人のための建物であった。

これは町家が元々は「店家」と書いて「まちや」と読んでいたことからも明らかである。

だが、実はその定義に統一された見解はない。

一般的には以下のような特徴を兼ね備えている建物を京町家と呼ぶようだ。

①奥行きが長い。

(「ウナギの寝床」と呼ばれる)②木造伝統軸組工法と呼ばれる建築方法を用いている。

※ 木造伝統枠組み工法・・・細い柱と梁を用いて建物を作る方法。

石の上に柱を置くため、地震に対して柔らかいという特徴を持つ。

これに対して、現在使われている木造在来枠組工法は、筋交い（建物の枠組を作る際に、必要上挿入する斜材）を用いて建物を固めることで耐震性を高めている。

③間取りに通り庭、坪庭、続き間を持つ。

④外観に瓦屋根、格子、土壁、軒などが見られる。

このように、私たちが今生活している家と比べると、はっきり言って全く違っている。

どうしてこんなにも違っているのか。

それは彼らには人との係わりが必要だったからである。

商売をする上で、人々とのコミュニケーションは無くてはならないものだ。

だから、彼らは家の構造にも会話を促す工夫をしている。

例えば、その入り口が基本的に通りに面していたこと。

これは、前にも述べたように、道の両側に家を建てていたためだが、彼らはこのように家と家とで通りを挟む、両側町というコミュニティを形成していった。

彼らは、住民との交流やふれあいを前提として家を建てていたのである。

もちろん、彼らは自然ともうまく付き合っていく必要があったので、建物にはそのための工夫もたくさん施されている。

特に、採光・風通し・雨風をしのぐ工夫には素晴らしいものが多い。

今回はその中でも、人・自然そのどちらのことも考えて作られたと思われる、京町家独特の構造、格子・軒・通り庭について探っていく。

Ⅰ．格子について・京格子の役割まず、格子の役割であるが、主に二つの役目があった。

一つ目は、夏をやり過ごすための風の通り道である。

これは隣や後ろに家があり、風を通す場所が正面の位置にしかなかったためである。

二つ目は目隠し兼のぞき穴の役割である。

京都では、隣家や向かいの家との間隔がほとんどなかったため、物騒な物音を聞いた時や、不審な人物を見かけた時にすぐ対処できるようにしておかなければならなかった。

そんなときに格子があれば、何が起こったのかすぐにわかり、対処できるというわけである。

また、格子の子は四角柱ではなく台形で、道路側の面の方が内側の面よりも太くなっている。

このため、外から見ると中が見えにくい。

つまり、壁の役割も担っていたのである。

・京格子のデザイン性京町家の一つの特徴に、デザインも洒落たものにしようという考え方があり、そのため格子にも様々なデザインがある。

これらのデザインは当時の着物のデザインの影響を受けていたようで、その証拠に、「元禄時代に目の細かい柄の着物が使われるようになってからは、格子のデザインも目の細かいものに変化した。

」と山本は述べている。

（P40）また、町家大工は、この格子を町並みのバランスを考えつつ、京都らしい、しゃれたものにする。

そして、デザインだけではなく、実用性もしっかり兼ね備えた格子を作らねばならなかった。

そのため、予算のことはあまり考えず、ベストなものを作ることを一番に考えていたようだ。

・ 格子の種類① 台格子…単純に並べたもの。

格子全体の土台となる。

② 出格子…柱間（はしらま）から一尺ないし一尺五寸ほどつきだしている。

③ 面格子…幅の広いもの。

④ 千本格子…幅が狭く細かいもの。

⑤ 子持ち格子…見付㊟1（竪子㊟2の幅）を大小異ならせたもの。

⑥ 木返し格子…見付と隙間がほぼ同じくらいに割り付けられたもの。

⑦ 連子格子…主に茶室などに使われる。

⑧ 目板格子…通り庭の仕切りによく使われ、雨水や光の浸入を防ぐために設えられている。

⑨ 吊り格子…竪子の上は上端まで繋がっているものの、下端が途中で切れていて、ぶら下がっているようにみえるもの。

注：竪子＝竪の格子見付＝格子の幅貫＝横の格子・ 格子による商いチェック格子のデザインはお店のジャンルによって使い分けられていた。

そのため、格子を見ていくと、その家の商売がよくわかる。

たとえば、米屋さんや酒屋さんは台格子を使うが、わざとがっしりしていて太いものを使っている。

酒樽や米俵がぶつかっても少々のことでは壊れないようにしていたのだ。

その色にも違いがあり、酒屋さんの場合、紅殻が塗りつけてあるため黒っぽい色をしているが、米屋さんは米のイメージを出させるために、木地のまま（白木）使っていた。

また、京格子と呼ばれる程に京都では有名な、「糸屋格子」というものがある。

特徴としては、格子の並び方が、親（太い格子）、子（細い格子）、子、親、子、のように一本通し二本切り子になっている。

また子の方は切子になっている。

これが「糸屋格子」というものであり、業種によって、切子の数が変わってくる。

織屋さんなら、一本通し四本切り子。

糸屋さんなら一本通し三本切り子。

そして、呉服屋さんなら一本通し二本切り子となる。

子がなぜ短くなっているかというと、糸屋さんなどでは、たくさんの色数の糸を使うので、光が入ってくる糸格子は最適なのである。

・ まとめこのように、格子を見ただけでも、京町家がデザインと便利さの両方をしっかりと採り入れていることがわかる。

今まで見てきたように、格子は覗き穴兼目隠しの役割と、暑い夏をやり過ごすための、風通しの役割を持っている。

これらの要素は京都で住むためには、必要不可欠な要素であった。

また、都である京都は便利さだけではなく、都にふさわしい日本独特の美しさも京町家の中に表現しようとした。

それによって、格子に様々な形の物ができていったのである。

参考文献：.京町家づくり千年の知恵 : 「間口三間」を生かす独自のこしらえ / 山本茂著. - 東京 : 祥伝社、 2003.12引用文献：.京町家づくり千年の知恵 : 「間口三間」を生かす独自のこしらえ / 山本茂著. - 東京 : 祥伝社、 2003.12Ⅱ．軒について・ 軒の定義京町家は隣の建物と軒を連ねているという特徴がある。

この「軒」とは一体何か？広辞苑によれば、「屋根の下端で、建物の外壁よりも外に突出している部分」であるとされている。

建物の一階と二階の間ぐらいにある屋根らしきもので、その長さは屋根よりも長く、各々の敷地を越えて、道にもかぶるくらいの大きさである。

また、この役割を持ち、かつ上の定義にも当てはまる建物の構造に「庇｣(ひさし)というものがある。

この二つはどう違うのか？かつては同じものとされていたが、明治以降、「庇」は「窓の上に付けられた雨よけ」とされ、二つは区別されるようになった。

しかし、今回は主に平安～江戸にかけての京町家を扱うため、両者は同じものとする。

・軒の役割その最大の役割は雨よけである。

京町家の壁は主に土でできている。

そのため雨に弱く、腐ったり、シロアリが湧く恐れがある。

だが、京町家の軒は大変大きくできている。

そのため、軒があれば、壁が直接雨に打たれることは早々ない。

京町家を長期間保ち続けるための最大の工夫と言えるだろう。

軒の役割はそれだけではない。

他にもたくさんあるが、その中でも重要だと思われるものをいくつか上げてみた。

① 日陰を作ってくれる。

→ 前にも述べたように道にもかぶるくらい大きいので、大きな日陰ができる。

② 建物内の気温調節 → 夏の暑い日ざしは、その高度が高いため、軒があることでその光がさえぎられる。

一方で、冬の暖かな光は、その高度が低いため軒があっても取り入れることが出来る。

③ コミュニケーションの場 → 軒下で世間話をすることが可能。

道の真ん中で一言・二言交わすだけではせわしない、だが他人の家に上がり込んでまでするような話ではない。

という時には最高の場。

④ 一休み → 椅子などを出して、道行く人たちの憩いの場に。

また、祇園祭の観賞や、店の商品の展示もできる。

⑤ 避難通路 → 隣の家の軒とは基本的に高さが同じなので、火事の時にはその上を走って逃げた。

・ 軒のデザイン性京町家の軒には、そのデザインにもこだわりがある。

隣と高さを揃えることで避難路としての役割を担っていたことは前にも述べたが、そこには京都ならではの統一性も見られる。

京都は都、つまり天皇や役人、武士など地位の高い人々が住む町でもあり、そのため目立った行為は許されなかった。

どんな目に合わされるかわからない状況だったのだ。

そこに生まれたのが、町並みを揃えようという考え方である。

京町家は畳や建具の寸法が統一されて作られている。

これには間口（玄関・入り口）が広いと税金を多く取られるという理由や、畳や建具を隣・近所で交換できるという理由があるが、軒の高さにまでこだわったのは、町並みを揃えるという考え方があったからではないだろうか。

・ まとめこのように、軒は、単なる建築物としての工夫だけではなく、人々を繋ぐ空間としても様々な役割を担っていたということがわかる。

もちろん、京の人々が家を建てる上で、クーラーも暖房も無いこの時代に、いかに京都の蒸し暑い夏そして底冷えの冬を乗り切るかは最大の課題だっただろう。