日本古典文法3

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一 否定の表現
3.打消推量の助動詞「まじ」(「べし」+「ず」) ①打消の推量(ないだろう、ないにちがいない) ②打消の意志・決意(ないつもりだ) ③打消の当然(はずがない) ④不可能の意(ことができそうにない) ⑤不適当・禁止(ないほうがよい、てはいけな い)
一 否定の表現
3.打消推量の助動詞「まじ」 • 冬枯れのけしきこそ、秋にはをさをさ劣る まじけれ。 • 「(この手紙は)ただ今は見るまじ」とて、入 りぬ。 • あやしのところには、立ち寄るまじきなり。
一 否定の表現
3.打消推量の助動詞「まじ」 • たはやすく人寄り来まじく家をつくりて… • わが身は女なりとも、敵の手にはかかるま じ。 【手にかかる】相手の意のままに殺される。
一 否定の表現
助動詞 ず じ 打消の意味 最も強い やや弱い 推量の意味 ない 弱い
まじ
最も弱い
強い
一 否定の表現
4.接続助詞「で」 ★打消を表す。(ないで、なくて、ない状態で) • なほ風雨やまず、雷鳴りしづまらで、日ごろに なりぬ。 • 忘れぬる君はなかなかつらからで 今まで生ける身をぞ恨むる 【恨む】→上二段活用
慣用句
1.え・・・・・・ず(ことができない) • 四月(うづき)、風吹けばえ出で立たず。 2.え・・・・・・じ/まじ(ことができないだろう) • さる慈悲なきことはえせじ。 • げにえ堪ふまじく泣きたまふ。 3.さらに・・・・・・ず(絶対に、決して・・・ない) • さらにさることはなし。
慣用句
4.つゆ・・・・・・ず/なし(すこしも・・・ない) • つゆ恐るるけしきもなし。 • 空しき家に一人ゐて、つゆ眠られず。 5.たえて・・・・・・ず/なし
二 推量・意志の表現
2.「らむ・けむ」 • 前の世にも、御契りや深かりけむ、世になく 清らなる玉の男御子さへ生まれ給ひぬ。
(前世でも御因縁が深かったのであろうか、世にま たとなく美しい玉のような皇子までもお生まれに なった。)
• かぐや姫を見つけたりけむ竹取の翁よりも 珍しき心地するに、・・・・・・
• 世の中にたえて桜のなかりせば、 春の心はのどけからまし。(古今)
【長閑けし】(形ク)のどかだ。静かだ。おだやかだ。 【訳】この世の中に桜というものがまったくなかったら、 〈咲くにつけ散るにつけ、心を悩ますこともなく〉 春はどんなに心のどかにいられるだろうのに。)
二 推量・意志の表現
• 思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢 としりせば覚めざらましを。 【訳】彼のことを恋しく思いながら寝たので、 夢に彼が見えたのだろうか。もしも夢と 知っていたら、覚めないでいればよかった のに。
二 推量・意志の表現
1.「む(ん)」・「むず(んず)」 • それ、起こせ。空寝ならむ。 • 行かむと思ふ。 • 心あらん友がな。
(情趣を解するような友人がいてくれたらいいな。)
• 死なんずるは、思ひまうけたれば、命惜しくも あらず。
二 推量・意志の表現
2.「らむ・けむ」 • ★「らむ」の意味(あり+む→あらむ→らむ) ①(視界外の)現在推量(今ごろは・・・ている だろう) ②現在の原因推量(どうして・・・ているのだろう) ③現在の婉曲・伝聞(・・・のような・・・とかいう)
六条御息所【ろくじょうのみやす(ん)どころ】
• この自己抑圧が、以降物語のなかで御息 所を生霊、死霊として活躍させることにな る。 • 源氏の正妻ーー葵の上を生霊となってとり 殺し、死後も死霊となって紫の上/女三の 宮を苦しめる。
二 推量・意志の表現
5.「めり・なり」 ★「めり」:見えあり→見あり→めり ①推定〈視覚的〉(ようだ、と見える) ②婉曲(ようだ、と思われる) • すだれ少し上げて、花奉るめり。
二 推量・意志の表現
5.「めり・なり」 ★「なり」:音あり→なり ①推定〈聴覚的〉(ようだ、のが聞こえる) ②伝聞(そうだ、という) • 奥の方より、「何事ぞ」といらふる声すなり。
一 否定の表現
2.打消推量の助動詞「じ」(「む」+「ず」) ①まい、ないだろう ②まい、ないつもりだ、たくない • 一生の恥、これに過ぐるはあらじ。 • 月ばかりおもしろきものはあらじ。
一 否定の表現
2.打消推量の助動詞「じ」 • 秋にまたあはむあはじも知らぬ身は 今宵ばかりの月をだに見む • 人はなど訪はで過ぐらむ 風にこそ知られじと思ふ宿の桜を
• 藤原道長の同母の兄ーー藤原道隆の三男。
藤原宣孝(のぶたか)
• 紫式部の夫。中流階級の官人。 • 二人の結婚ーー紫式部(27~28歳)・宣孝 (45~46歳)。
空蝉(うつせみ)
• 伊予介の妻。 • 名前の由来は、光源氏の求愛に対して一 枚の着物を残し、逃げ去ったことを、源氏 がセミの抜け殻に喩えて送った和歌から。
二 推量・意志の表現
• この子とく生まれたらましかば、これに わが官爵も譲らまし。 • 「いかにせまし、迎へやせまし」と思し 乱る。 • これになにを書かまし。
二 推量・意志の表現
4.らし ★確かな根拠に基づく推定(・・・らしい) • 夕されば衣手(ころもで)寒し み吉野の吉野の山に雪降るらし。
日本古典文法
第三章 助詞・助動詞
一 否定の表現
1.打消の助動詞「ず」 • 男も人知れず血の涙を流せど、え遭はず。 • 数ならぬ身は山の端(は)にあらねども多く の月を過ぐしつるかな。 • この人々の深き志は、この海にも劣らざる べし。
一 否定の表現
1.打消の助動詞「ず」 • 京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。 • 頼朝が首を見ざりつるこそ安からね。 • (私が)今その要句を教へむ。ゆめゆめ忘 れざれ。
二 推量・意志の表現
3.「まし」 • ①反実仮想(もし・・・としたら・・・だろうに) • ②ためらい(・・・しようかしら) • ③実現不可能な希望
二 推量・意志の表現
3.「まし」 ①反実仮想のパターン • ましかば・・・まし • ませば・・・まし • せば・・・まし • 未然形+ば・・・まし
二 推量・意志の表現
【答ふ】(下二段)答える。
• 明くれば、二月(きさらぎ)にもなりぬめり。 雨いとのどかに降るなり。
二 推Βιβλιοθήκη Baidu・意志の表現
6.べし ①推量 ②意志 ③当然・義務(はずだ、べきだ) ④可能(ことができる) ⑤適当・勧誘・命令(のがよい、よう、せよ) ⑥予定(ことになっている)
二 推量・意志の表現
6.べし • 潮満ちぬ。風も吹きぬべし。 • 住む館(やかた)より出でて、船に乗るべき ところへ渡る。 • 羽なければ、空をも飛ぶべからず。 • この一矢に定むべしと思へ。 • 頼朝が首をはねて、わが墓の前にかくべし。
六条御息所【ろくじょうのみやす(ん)どころ】
• 大臣の娘に生まれ、16歳で東宮妃となる が、20歳で東宮と死別した。 • 東宮の死後、年下の光源氏と恋愛関係に おちいる。 • 源氏を独占したいと渇望しながらも、年上 だという引け目や身分高い貴婦人だという 誇りから素直な態度を男に見せることがで きず、本心を押し殺してしまう。
二 推量・意志の表現
2.「らむ・けむ」 • ★「けむ」の意味(けり+む→けむ) ①過去推量(・・・ただろう) ②過去の原因推量(・・・たのだろう) ③過去の婉曲・伝聞(・・・たような・・・たとかいう)
二 推量・意志の表現
2.「らむ・けむ」 • などや苦しき目も見るらむ。 • ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ。 ★「ひさかたの」ーー枕詞(まくらことば) 【訳】光ののどかなこの春の日に、どうして落ち 着いた心もなく花は散っているのだろうか。
藤原道長 【ふじわらのみちなが】
• 平安時代中期の公卿。摂政・太政大臣。 • 長女彰子は一条天皇の皇后となって、後 一条/後朱雀両天皇を生み、次女妍子は 三条天皇の皇后、3女威子は後一条天皇 の皇后、4女嬉子は後朱雀東宮の妃。 • 「一家立三后」と驚嘆された。 (966-1027)
藤原 伊周(ふじわらの これちか )
(まったく・・・でない)
• 訪ふ人も絶えてなき山里なり。
慣用句
6.いと/いたく・・・・・・ず/なし (それほそ・・・ない、あまり・・・ない) • 川波いと高からねども、渡る人なし。 • よき人はいたく興ぜぬものなり。 (高貴な人はあまり面白がってはいけないも のである。)
二 推量・意志の表現
1.「む(ん)」・「むず(んず)」 (「むず」は「む」を少し強調したもの) ①意志(・・・しよう) ②推量(・・・だろう) ③仮定(・・・としたら) ④婉曲(・・・のような) ⑤適当(・・・がよい) ⑥勧誘(・・・しませんか) ☆「いす換えてんか」
光源氏
• 桐壺帝の第二皇子。母は桐壺更衣。母は 三歳のとき亡くなった。幼少の頃から輝く ばかりの美貌と才能に恵まれた。母に似る 女性藤壺への思慕が初恋となり、その面 影を求めて生涯様々な女性と関係を持つ。 • 父桐壺帝は彼を皇太子とすることを考えた が、実家の後援がないことを危ぶみ、臣籍 降下させ、源氏の姓を与えた。
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