日本动植物(日文版)
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1 ヒグマ(ひぐま)
(全2件)(全1件)
【羆】
brown bear
[学名:Ursus arctos]
哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。
ヨーロッパからシベリア、さらにベーリング海を越えて北アメリカまで広く分布する。
ヨーロッパではピレネー山脈、イタリア半島など、数か所に隔離状態で分布するにすぎない。
北海道のものは本種の1亜種でエゾヒグマU. a. yezoensisとよばれる。
形態上に大きな差があり、アラスカのコディアク島に生息するアラスカヒグマ(コディアクヒグマ)U. a. middendorffiは体長2.8メートル、体重700キログラムを超すといわれる。
ヨーロッパヒグマU. a. arctosでは200キログラムに達しない。
北のほうのものほど大きくなるというベルクマンの規則に当てはまる例としてあげられる。
体毛は主として褐色であるが、赤みの強いもの、黒っぽいものもある。
ヒグマの分類には、ヒグマ1種としすべてをこの亜種とするものと、アラスカヒグマとハイイログマを独立させ1属3種とするもの、ハイイログマだけを独立させ1属2種とするものなどがある。
幼獣は木登りをするが、成獣はあまり得意ではない。
土の中に掘った穴や樹洞の中で越冬する。
雌はこの冬ごもり中に1~2子を産む。
雑食性で、低木の樹木の実、ハチなどを食べるが、サケなどの魚類も好んで食べる。
北海道のエゾヒグマではウシ、ウマ、ヒツジなどの家畜を襲ったり、リンゴ園を荒らしており、有害獣駆除として捕獲が行われている。
ときとして人間を襲うことがある。
[執筆者:渡辺弘之]
2 キジ(きじ)
【雉】
pheasant
広義には鳥綱キジ目キジ科キジ亜科キジ族に含まれる鳥で尾の長いもののうち、クジャク類とセイラン類以外の総称。
狭義にはそのうちの1種。
キジ科には5亜科があり、そのうちのキジ亜科は、ウズラ、コジュケイなど比較的小形で尾の短い種を含むヤマウズラ族と、大形で一般に尾の長いキジ族とに分けられる。
キジ族には、ジュケイ属Tragopan、ニジキジ属Lophophorus、キジ属Phasianus、ヤケイ属Gallus、コクジャク属Polyplectron、クジャク属Pavoなど、16属約50種が属し、アフリカ産のコンゴクジャクを除いてすべてアジアに分布している。
雌雄は異色異型で、雄は足に大きなけづめをもち、羽色と飾り羽の美しいものが多い。
雌はじみな褐色のものがほとんどである。
[執筆者:竹下信雄]
キジの雌
3 オオカミ(おおかみ)
【狼】
wolf
[学名:Canis lupus]
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。
別名タイリクオオカミ。
アメリカではコヨーテと区別してシンリンオオカミtimber wolf、ハイイロオオカミgrey wolfなどともいう。
かつてはユーラシア、北アメリカ、メキシコに広く分布したが、いまでは西ヨーロッパ、アメリカ合衆国の大部分からほとんど姿を消し、イギリス、ポーランド、スイス、日本などでは絶滅した。
大きさ、毛の長さや色などに個体差と地域差がある。
寒い地方のものは一般に大形、淡色で毛が長いが、温暖な地方のものは小形、濃色、短毛である。
約30の亜種に分けられているが、最小の亜種でも肩高は中形日本犬より大きい。
体長80~160センチメートル、尾長30~50センチメートル、肩高55~97センチメートル、体重15~65キログラム、ときに82キログラムに達する。
雌は雄より一般にやや小さい。
前足は5指、後足は4指、歯は42本で、歯式は
で、吻(ふん)が長く、耳は直立して先がとがるなど、コヨーテやジャッカルによく似る。
しかし吻端部が太く、鼻鏡(鼻孔周囲の無毛部)の幅は、それらの25ミリメートル以下に対し30ミリメートル以上あり、犬歯が太くて短く、乳頭は10個しかない。
シェパード、ハスキーなどのイヌにも似るが、耳が小さく目がつり上がり、前頭部が丸くヘルメット状に盛り上がっている。
また、四肢が長く左右の肘(ひじ)が接近し、尾が太い。
頸(くび)と背筋の毛は、黒と灰褐色の混じり合った松の皮様の模様をもち、体側の毛よりふさふさして長いため、その境界は鮮明である。
裂肉歯も一般にイヌより大きく、上顎のもの(第4前臼歯)は長さ18~29ミリメートルある。
体の背面は普通、灰黄色から灰褐色、腹面と四肢の内側は淡色で、その境界は頬(ほお)や四肢では鮮明、前肢手根部の境界は多くは暗色斑(はん)で縁どられる。
冬毛は夏毛よりも長く淡色。
しばしば全身が白色または黒色の個体がある。
[執筆者:今泉吉典]
4サル(さる)
【猿】monkey、ape
哺乳(ほにゅう)綱霊長目中ヒトを除いた部分non-human primatesに対する一般呼称。
狭義には、類人猿、原猿類をも除き、オマキザル、オナガザル2上科に属する種を総称することもあるが、一般名であるから厳密な限定はない。
英名のモンキーmonkeyは尾の長いサルをさし、尾がないか極端に短いものつまりtailless monkeyをエープapeとよぶ。
分布
サルは、新旧両大陸の赤道を中心に分布を広げている。
メガネザルは、フィリピン、ボルネオ島、スマトラ島に分布する。
ロリス類は、アジアではインドとインドシナ半島、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島に、またアフリカではサハラ砂漠以南の森林、疎開林、サバンナに広範な分布をみせる。
キツネザル類は、マダガスカル島とコモロ諸島の特産である。
原猿類は、第三紀暁新世と始新世には北アメリカ大陸やヨーロッパで適応放散し多くの化石が知られているが、両大陸は現在ではサル類とは無縁の地になっている。
オマキザル類は、アマゾン川・オリノコ川流域を中心とする南アメリカ大陸と、北はメキシコ南部までの中央アメリカに分布し、そのために新世界ザルの名でもよばれる。
オナガザル類の分布は、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸、アラビア半島の一部、およびインド半島以東、チベット、中国の中南部、東南アジアの島々、そして日本の本州北端にまで達する。
モルッカ諸島以東、ニューギニア、オーストラリア、朝鮮半島、琉球(りゅうきゅう)列島、そして北海道には分布しないし、サル類の化石も知られていない。
ショウジョウ科のオランウータンはボルネオ島とスマトラ島に、テナガザル類はインドシナ半島を中心に、西はアッサム、北は中国南部、そしてスマトラ、ジャワ、ボルネオの各島に分布する。
アフリカの類人猿であるゴリラ、チンパンジー、ボノボは、いずれもアフリカの熱帯林に分布している。
サル類の分布の北限を占めるのはニホンザルで、青森県下北(しもきた)半島の北緯41度30分、南限を占めるのはチャクマヒヒで、アフリカ南端の南緯34度30分である。
人間との関係
人間との類似性から、サルはすべての動物のなかでも特殊な位置を与えられてきた。
すなわち、サルは動物と人間あるいは自然と文化の中間に置かれ、このことは、世界中の神話や儀礼のなかに登場するサルのさまざまな性格を説明している。
多くの民族がサルに関しては一種の逆進化論を語っており、サルはいわば退化した人間と考えられている。
たとえばメキシコのアステカの創世神話では、原初に激しい嵐(あらし)がおこって人々を吹き飛ばすが、風に運ばれた人々も生き残った者もサルになったといい、これは人間が変身したものと考えられている。
マヤ系インディオのキチェの神話集『ポポル・ブフ』のなかでも、サルは創造主が最初に木でつくった人間の末裔(まつえい)であると語られている。
彼らは顔をつぶされ破壊されてしまったが、その子孫はいまもなお森の中に住んでいると信じられている。
またチアパス高原では、サルは悪と混沌(こんとん)の象徴とされ、女たちが男の誘惑に負けたりすると、それはサルのせいだとされる。
この否定的な性格は、同地のカーニバルに現れて、いたずらの限りを尽くす道化のサルにも受け継がれている。
ボルネオ島先住民のダヤクでも、創造主が人間をつくろうとした際の失敗作が、オランウータンやサルの祖先だと語られている。
しかし、サルはつねに否定的な性格を負わされているわけではない。
バビロニアやエジプトではサル(ヒヒ)は月の神と同一視され、とくにエジプトでは太陽神を出迎える従者としてのサルの像が多数残されている。
このサルは太陽神の仲間であるとともに、知恵の神や書記、学者の守護神ともされている。
東アフリカの王権神話では、王となる人物がしばしばサル(コロブス属)に結び付けられ、ケニアの農耕民メルでは白黒2色のコロブスモンキーが神聖視されている。
インドでも神聖な動物とされ、アッサム地方の山地農耕民ガロでは共同体の供犠にサルを用いる。
またインドネシア、スマトラ島北部の民族集団バタックでは、人間とサルの祖先が同じであると考え、食べることを禁じている。
このほかマダガスカル島でも、サルを殺したり捕らえたりすることをタブーとし、死んだサルは埋葬するという。
5 ヒノキ(ひのき)
(全5件)
【檜】
[学名:Chamaecyparis obtusa (Sieb. et Zucc.) Endl.]
ヒノキ科の常緑高木樹。
幹は直立し、大きなものは高さ50メートル、径2.5メートルに達する。
樹冠は密な卵形で先端は円形をなす。
樹皮は赤褐色で外面は灰色を帯び、平滑で縦に裂け、やや幅の広い長い裂片となってはげる。
葉は鱗片(りんぺん)状で交互に対生し、先は丸く、表面は濃緑色で、近
縁種のサワラにあるような腺点(せんてん)はない。
葉裏は上下左右の葉の接するところに白色の気孔線があり、Y字形をなす。
雌雄同株。
4月、開花する。
雄花は紫褐色、多数ついて広楕円(だえん)形をなし、鱗片内に葯(やく)が3個ある。
雌花は紅紫色で枝の先端につき、球形で長さ3~5ミリメートル、雄花より大きく、鱗片内に胚珠(はいしゅ)が4個ある。
球果はほとんど球形で径0.8~1.2センチメートル、初めは緑色であるが、10~11月に熟して赤褐色となる。
種子は卵形で光沢のある赤褐色、左右にやや幅の狭い翼がある。
海抜10~2200メートルの山地に生え、福島県以西の本州から九州(屋久(やく)島)に分布する。
木曽(きそ)地方のヒノキ林は古くから著名で、日本三大美林の一つに数えられる。
スギに比べると成長は遅いが、比較的土地を選ばずに育ち、かつ材価が高いので、スギに次いで多く造林される。
福島県以北、北陸地方の寒地や、四国、九州の暖地では生育がよくない。
山の中腹の、やや乾燥ぎみの所が適地である。
材は、辺材は淡黄白色、心材は淡黄褐色または淡紅色、木目は通直、緻密(ちみつ)で狂いが少ない。
堅さは中くらいで加工しやすく、表面の仕上げはきわめて良好で、光沢があり、香りもよい。
保存性が高く、よく水湿に耐え、比重は0.44で軽く、日本建築の材としては第1位の材である。
建築、土木用、船、器具、彫刻、その他用途が広い。
樹は庭園樹、盆栽、生け垣などに利用する。
[執筆者:林弥栄]
6杉
スギ(すぎ)
【杉・椙・倭木】
Japanese cedar
[学名:Cryptomeria japonica (L. f.) D. Don]
スギ科の常緑大高木。
日本の特産種で、中国には類似種の柳杉C. fortunei Hooibrenkがある。
日本では本種に通常「杉」の字をあてるが、中国語の「杉」は本種ではなく、同じくスギ科のコウヨウザン(別名オランダモミ)をさしている。
日本のスギに該当する中国語は日本柳杉である。
幹はまっすぐに伸び、巨大なものは高さ68メートル、径7メートルに達する。
枝や葉は密につき、円錐(えんすい)形の樹形をつくり、老樹では円形となる。
樹皮は赤褐色で、縦に割れ、細長い薄片となって、はげ落ちる。
葉は小形の鎌状(かまじょう)針形で螺旋(らせん)状に配列し、永続性で枯死しても脱落することはない。
葉の横断面は長い菱(ひし)形をなし、樹脂溝は1個で中央に近く、維管束の下側に位置する。
四面に気孔がある。
雌雄同株で3~4月、開花する。
雄花は前年の小枝の先の葉腋(ようえき)に穂状に集
まってつき、黄色で楕円(だえん)形、長さ5~8ミリメートル。
雌花は前年の小枝の先に1個ずつ下向きにつき、緑色で球形をなし、長さ4.5~5ミリメートル。
球果は木質で卵状球形、長さ2~3センチメートル。
初め緑色であるが、その年の10月ころ成熟し、裂開して褐色となる。
種鱗(しゅりん)と包鱗は下半部が合着し、包鱗の上端は三角状でやや反曲し、種鱗の上端は4~6個の牙歯(がし)状をなす。
種子は種鱗の茎部に2~6個つき、倒披針(とうひしん)形で両側に狭い翼がある。
子葉は2~3枚、まれに4枚。
染色体数はn=11、2n=22。
なお、スギの花粉は、アレルギー性鼻炎の原因であるとして、近年話題になっている。
[執筆者:林弥栄]
7ブナ(ぶな)
【・椈】
[学名:Fagus crenata Bl.]
ブナ科ブナ属の落葉高木。
高さ20メートル以上、直径1メートルにも達する。
樹皮は灰白色で平滑であるが、地衣類がつきやすくさまざまな斑紋(はんもん)をつくる。
葉は左右不対称の卵形から菱(ひし)
形で、縁(へり)は波状の鋸歯(きょし)がある。
側脈は7~11対で、先端は上部へ流れる。
花は新葉よりすこし早く開く。
雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)につき、緑色の総包内に、赤紫色の柱頭をもつ2個の花をつける。
雄花は新枝の下部につき、細い柄をもつ頭状花序を下垂し、黄色の葯(やく)が割れ大量の花粉を放出する。
風媒花で、雌性先熟である。
一雌花内には三つの子房と六つの胚珠(はいしゅ)があるが、一胚珠だけが成長して殻斗(かくと)内に二堅果を結ぶ。
秋、黄葉に先だって成熟する。
堅果は褐色で三稜(りよう)のある卵形なので、ソバの実に例えてソバグリともいう。
隔年結果の性質が強く、豊作は6~7年に1回程度と少ない。
堅果はシギゾウムシの食害や粃(しいな)が多く、落下後の乾燥にもきわめて弱いことから、天然更新上の一つの障害になっている。
ほかのブナ科の種は、発芽のときに地下に種子が残る地下子葉型であるが、ブナだけは双葉が地上に出る特性をもつ。
北海道渡島(おしま)半島の尻別(しりべつ)川流域を北限とし、鹿児島県高隈(たかくま)山まで分布する。
温帯林の肥沃(ひよく)な土地の優占種となり、いわゆるブナ帯を形成する。
とくに多雪な日本海型気候下では他種との競争に強く、近年の伐採を免れた美林が残存する。
材は人工乾燥と防腐の技術により、最近では家具材やフロアリングのベニヤ板などとして重要となっている。
ブナ属には、日本産のイヌブナのほか、ヨーロッパブナ、アメリカブナ、タイワンブナなど10種以上知られている。
かつてヨーロッパ文明をはぐくみ、「森の母」と尊ばれたブナの広大な自然林も、今日では牧畜や農耕や植林のため、その大半が失われてしまった。
[執筆者:萩原信介]。