日语翻译材料

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夏目漱石の「坊っちゃん」は教師で赴任した四国?松山の地を随分こき下ろす。ある日、宿直の部屋が西日で暑くてたまらない。「田舎だけあって秋がきても、気長に暑いもんだ」。悪態をつく江戸っ子の坊っちゃんだが、昨今の東京の残暑を知れば考えも変わろう

▼列島の秋暑(しゅうしょ)は厳しく、東京も暑い。きのう仰いだ空は、まだ夏休みの絵日記のような雲を残していた。さすがに朝夕は涼気を含んできたが、日中(ひなか)に歩けば陰がうれしい。街のあちこちに、なお日傘の花が咲く

▼今ごろの日傘は「秋日傘」という季語になっている。〈秋日傘別れの余情折りたたむ〉中村恭子。夏を見送った一抹の寂しさが言葉にある。だが、この残暑の下、日傘は真夏と変わらぬ活躍だ。秋の足を止めて晩夏が居座っている


▼せめて秋らしい気分をと、花屋で芒(すすき)と吾亦紅(われもこう)を買い求めた。大きな花瓶に投げ込むと効果はてきめんで、たちまち部屋に秋がきた。月がほしいところだが今夜は新月。この月が満ちていって中秋の名月になる

▼目を転じれば、猛烈な台風16号が沖縄付近を通過している。近年は海水温が上がって勢力が衰えず、発生から消えるまでの「寿命」が延びているという。九州地方も厳重な警戒がいる

▼漱石に「二百十日」という中編があって、2人の男が風雨をついて阿蘇に登山して散々な目に遭う。その阿蘇のあたりは、今年7月の九州北部豪雨で大きな痛手を負った。早めの備えで守りを固め、少しの被害もなしに台風を去らせたい



東京の多摩動物公園でユキヒョウ(雪豹)の母が死んだという記事に、いささか感じるものがあった。3頭の子を去年産んで育てていた。エサの時間だけは、一緒にしておくとすべて子に与えて食べないため、部屋を分けていたそうだ

▼その日も子を別の部屋に移した。油圧扉を閉めているときに子が鳴きだし、母豹は飛び込もうとして扉に挟まれたという。〈物いはぬ四方(よも)の獣(けだもの)すらだにもあはれなるかな親の子を思ふ〉。源実朝の一首が胸に浮かんだのは、人間の感傷だろうか

▼動物にも、親から愛情を受ける大切な時期がある。子猫や子犬がかわいいといって、生後すぐに売り買いするのは酷だと、動物愛護法が改正された。まず生後45日までは親から引き離すのを禁じた


▼離すのが早すぎると、成長してから、吠(ほ)える、噛(か)むなどの問題行動を起こしやす

いという。その結果飼い主に捨てられ、殺処分につながる。人間の欲と身勝手に翻弄(ほんろう)される命は少なくない

▼ひどい話もある。ある本によれば、飼い犬を処分するよう自治体の施設に連れてきて、帰りに子犬を「譲ってくれ」と言った男がいたそうだ。犬、猫の処分は減ってはきたが、それでも年に約20万匹にのぼる

▼コンパニオンアニマルという言葉はうるわしい。ペットとして飼うイメージを超えた、伴侶としての動物を言う。愛情を注いで、癒やされる。その情けをかりそめに終わらせないのが人の道だろう。使い捨てではない命。きのうから動物愛護週間が始まっている。



青という色は若さや未熟を表す。「青い果実」と聞けば大人になる前の、思春期の少年少女を思い描く。先の本紙俳壇にこの句があった。〈青柿のような「中二」に遺書はなく〉。作者の鎌田進さんは大津市のいじめ事件で命を絶った少年を悼む

▼俳人の宇多喜代子さんには〈青柿にこれからという日数(ひかず)かな〉がある。何年か前に詠まれたものだが、前途ある命が、これからという日数を絶たれた悲しみに、あらためて思いが至る

▼大津市ではおとといまで、いじめや暴力で死に追いやられた少年少女15人の写真や、残されたメッセージを紹介する展示が開かれていた。暴力事件で息子を亡くした青木和代さんが、苦しむ子らに「生きてほしい」と伝えたくて企画した


▼「やさしい心が一番大切だよ。だから、その心を持っていないあの子達の方が可哀相(かわいそう)なんだよ」(15歳女子)。「ある日は日の光となり、ある時は雨となって、あなた達(家族のこと)の心の中で生きています」(14歳男子)。一文字一文字が、いじめの罪深さを告発してやまない

▼自分のことは針で刺されても痛いと騒ぐ。なのに他人には槍(やり)を突き刺して平気でいる。大なり小なり人が持つ性(さが)だろう。人の痛みに気づくには、気づかせるにはどうしたらいいのかと、心ある大勢が悩んでいる

▼2学期が始まった。先生も生徒も、いじめについてもっと話し合ってほしいと思う。風通しよく話すことで、滅菌されるように消えるいじめもある。苦しむ子をゼロにしたい。




酒豪のことを英語で「スリーボトルマン」と言うのは写実的だ。つまり酒瓶3本男。中国語だとこれが「海量(ハイリアン)」になる。海ほどの量を飲むという、「白髪三千丈」ばりの誇張が中国ら

しい。言葉としては面白い。だが、決してまねることなかれ、である

▼春がめぐり花が咲き、今年も「アルコール?ハラスメント(アルハラ)」が案じられる時節になった。新入生や新入社員ら、後輩を迎えた面々はつい張り切りがちだ。宴が暗転せぬように、先輩らしい自戒が要る

▼強要はむろんだが、断れない雰囲気を作るのも、酒以外の飲み物を用意しないのもアルハラにあたるという。本紙記事によれば、この10年に飲酒に関連して死亡した若者は21人を数える。あたら……の思いが募る


▼この季節、満開の桜の下も危ない。東京消防庁によれば、花見の宴から救急車で搬送されるのは20代が断然多い。世慣れしない初々しさが、往々にしてあだになる。堂々と杯を伏せるのも作法と心得たい

▼酒について英国の元首相チャーチルは言ったそうだ。「アルコールが私から取り出したものより、私がアルコールから取り出したものの方が多い」、と。飲んべえながら仕事は果たし、人生をユーモアに丸めた達人はさすがだった

▼日本には「浅酌(せんしゃく)」というゆかしい言葉がある。忘れられたような二文字だが、静かにほどよく酒をのむことを言う。酒の側に他意はない。百薬の長か、それとも災いと病の種か。洋の東西を問わず、つまりは人次第となる。




だれが詠んだか〈素通りはさせぬと鰻(うなぎ)屋のにおい〉と川柳にある。うちわでパタパタとあおいで、炎暑の街に香ばしいにおいを流してよこす。土用の丑(うし)の日にウナギの蒲焼(かばや)きを食べる風習は、江戸の昔に始まった

▼ルーツは学者の平賀源内とも、戯作者(げさくしゃ)の大田南畝(なんぽ)ともされる。はやらない鰻屋に客を呼ぶため、今で言うキャッチコピーを考えたというが、「伝説」の域を出ない。ともあれ国民的行事となり、今年は27日がその日になる

▼梅雨明けとともに、がぜん腹の虫が鳴る向きもあろう。だが、いかんせん養殖用の稚魚のシラスウナギが捕れていない。不漁続きの近年でも今年は際だつ。価格は高騰を超えて暴騰の域といい、蒲焼き店の廃業も出る深刻さという


▼小売りの蒲焼きも値を上げていて「代替品」が人気らしい。サンマやアナゴのほか、豚バラ肉の蒲焼きもスーパーに並ぶ。ウナギは昔日の「特別なごちそう」に戻ったような印象だ

▼日本人のウナギ好きは突出し、世界で食べる約7割を胃袋に収めるという。消費大国への目は

厳しく、欧州に続いて米国が、野生生物を保護するワシントン条約で規制する検討を始めた。食文化ねらい撃ちの感もあるが、ウナギが減って黄色ランプが灯(とも)りそうなのは否めない

▼冒頭の句との掛け合いでもあるまいが、〈うなぎ屋の前でともかく深呼吸〉が笑わせる。においをしっかり鼻で味わい、さて、暖簾(のれん)をくぐるか立ち去るか。思案のしどころとなろう丑の日が、今年は少し恨めしい。





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